東西「酢豚」対決(コラム:マッキー牧元×門上武司の往復書簡)

東西「酢豚」対決(コラム:マッキー牧元×門上武司の往復書簡)

昨今、雨後の筍のごとく、気鋭の新店が登場している中華料理。その中華メニューのなかでも、定番人気なのが「酢豚」です。今回は、見た目からして対象的なこれぞ究極・東西対決。共通しているのは、いずれも“シンプル・イズ・ベスト”!


今回のお題【酢豚】

酢豚対決 東/海鮮名菜 香宮 vs. 西/広東料理 糸仙

【東】マッキー牧元 海鮮名菜 香宮の「黒酢入り酢豚」

門上様、今回は酢豚ですか。豚好きの僕としては、燃えるお題ですね。

酢豚といっても、昔ながらの白酢や赤酢を使った、パイナップルや野菜入りの酢豚と、豚肉だけの黒酢の酢豚がありますが、ここ近年、東京では黒酢の酢豚が主流になりつつあります。

ただしこの黒酢版は、餡の味が勝ちすぎている場合が多く、美味しいながらも豚の味が生きていない店が多いように思います。

だから赤坂璃宮・総料理長である譚 彦彬氏がプロデュースするここ『香宮』で、この酢豚に出合ったときは、小躍りしました。

なにより加熱がいい。良質のとんかつのように、肉の中心部に優しく火が通って、しっとりとしている。噛めば、使われるもち豚のきめ細やかさの中から、肉のジュースが溢れ出て、顔が崩れます。脂も、甘く香りながら溶けていく。

衣は餡をまといながらも、カリカリとした部分を残し、餡は、酸味がきりりと立ちながら、丸いコクがある。そして余韻には、豚肉の優しい風味が長く残ります。

こちらの料理長は、34歳の篠原裕幸さん。

門上さん、ぜひこの酢豚を食べながら、日本の中国料理の明るい未来を語りませんか。

これ以上に引くものはない究極の潔さ。豚肉の旨さを引き出すための黒酢の存在が見事な一品。

▲黒酢入り酢豚 3240円
もち豚のロースを使用。カリッとした食感を生かすための火加減と、きりっとした黒酢餡の絡み具合が絶妙。「極めて潔い酢豚です。豚肉の美味しさをしっかり味わえる火入れ、餡とのバランスに唸ります。鼻に抜ける香りもごちそう」(牧)

海鮮名菜 香宮
[住所]東京都港区西麻布1-4-44 シグマ西麻布II 1F(星条旗通り沿い)
[TEL]03-3478-6811 
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、17時半~23時(22時LO)
[休業日]日
[席]テーブル16席、個室4席×1部屋、6席×2部屋/計32席
カード可/予約可/サ10%(ディナーのみ) 
[交通]地下鉄千代田線乃木坂駅から徒歩5分、地下鉄大江戸線・日比谷線六本木駅から徒歩6分

【西】門上武司 スパイスチャンバーの「すぶた」

牧元さん、京都の中華料理は独自の世界を作り上げています。舞妓中華などと評される淡い味わいの料理。極端なことをいえば、ニンニクやラー油を使わない店さえあるぐらいです。

今回登場の『糸仙』は、五花街の一つ・上七軒の路地に佇む名店。ご主人の内海博史さんは、元々組紐職人だったのですが、それを辞し、親戚の『芙蓉園』で一年の修業の後、昭和56年にのれんをかかげたのです。

僕が初めてここの「すぶた」を食べた時の感動は、いまも忘れることができません。

お皿にいるのは豚肉とパイナップルのみ。いまどきの黒酢の酢豚とは、まるで異なる料理でした。もう何十年も前に体験したことのある中華料理店の光景が蘇ってきたのです。

透明感がありながらもとろみのある餡に包まれた豚肉は、輝いているのです。濃密な甘みをたたえながらも、豚肉の香りや味わいがじんわりにじみ出ているのです。ときおりパイナップルの酸味がアクセントになります。

シンプルだが、印象は極めて深い。これぞ京都中華の典型の一つです。

いちど花街めぐりとともに、京都中華を実感してみてください。

淡く優しい“はんなり”味が京都中華の醍醐味。その極みとも呼べる遺産的存在のシンプルながら深い酢豚。

▲すぶた 750円(税別)
愛くるしい表情の“はんなり酢豚”。「いまどきパイナップルが入る酢豚と出会うことは本当に少ない。まさにはちみつのような甘みがいつまでも舌や胃袋に残ります。花街にあるというロケーションも含めて、この一品は貴重な味わいです」(門)

広東料理 糸仙
[住所]京都府京都市上京区今出川通七本松西入真盛町729-16 
[TEL]075-463-8172
[営業時間]17時半~21時(20時半LO)
[休業日]火、第3火・水
[席]カウンター6席、テーブル7卓(丸×5卓、4人席×2卓)/計50席
カード不可/予約可/サなし
[交通]京福電気鉄道北野線北野白梅町駅から徒歩約10分、京都市バス 上七軒バス停から徒歩4分

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プロフィール

マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。

門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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